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児童手当の所得制限

 もう1ヶ月以上前になるが、新聞の投書から。
 会社員の夫、専業主婦の自分(投稿者)、7歳、4歳、1歳の3人の子供という家族構成の方から。
 所得制限によって、児童手当、小児医療費の助成、私立幼稚園児の親への補助、のサービスがいずれも受けられない、所得制限を撤廃すべきだ、との主張。文中にさらっと「夫の給料は決して多いわけではなく」と書かれている。

 以下、児童手当に限った話。
 もちろん、所得制限の是非についてはいろいろな意見があるだろう。翌週の同欄には反対意見が載っていた。僕自身も、9割が手当をもらえる所得制限とは何だろう、と思う。所得制限をもっと厳しくしてその分1人あたりの額を多くする、という方法もあるだろうし、課税最低限や控除を見直した上での税額控除という考え方も有力だと思う。
 毎月五千円(3人目からは一万円)もらったところで… という声もよく聞くが、低所得者層になればなるほどこの五千円が大きいという話もある。

 でも、今日書きたいのは制度論の話ではなく、「この投書者の夫の収入はどれくらいなのか」ということ。
 児童手当は今年の4月から所得要件が緩和された。上記の家族構成から収入を推計すると、緩和後の基準であれば年収900万以上。緩和前であっても800万円を超える水準。「多いわけではなく」という感覚は僕とは違う。
 仮に緩和後の基準であれば、上位1割には入っていることになる。

 多分、この数字があるのとないのとでは、投書から受ける印象も違うのではないかと。

追伸:同じ面に、子供2人の場合の所得要件の金額が載っていた。見比べれば僕が書いたことに近い内容には気付くはず。

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コメント

下限に近い収入であれば、子供3人いることを考えるとそれほど多い年収とはいえないかなという気もします。

でも、苦しいといえる程でもないけど、余裕はないだろうなという感じでしょうか。住んでいる地域にもよると思います。首都圏の住宅費を考えると、5人家族が住む広さの住宅だと結構費用がかかります。地方だとそれほどでもないと思いますが。その点も考慮すると、同じ収入でも感覚が変わってくると思います。

でも、聞くところによると子供が小学生のうちは、まだ教育費がそれほどかからないので、小学生のうちに貯蓄しておかないと中学生以上になると大変だときいたので、できればその辺の手当てを考慮して欲しいと最近思っています。というかお金ばらまくのではなく教育費がそれほどかからない制度を考えてほしいですね。

投稿: こに | 2006.08.19 13:58

>こにさん
 さすがこの分野にはコメントが早く付きますね。
 確かに、(児童手当に限りませんが)年収ベースだけで見ている制度では、それに起因する不公平感はあると思いますが、これは何を基準にしても何らかの形で出てくるものですから、やむを得ない部分だと思います。
※当然、子供の数によって、児童手当の所得要件の基準は変化します。

 ただ、上位1割に入っているのであれば、「多いわけではなく」と書いても理解を得にくいだろうという想像力は持っていて欲しいですね。理解する/しないの正しい/間違いということは別として。
この投稿者は東京都の方でした。

 教育費の話はいずれ書こうと思っていますが、かかる面とかけている面は区別すること、後者はやり方しだい、だと思っています。バブル以前からずっと貧乏な状況で育った僕の実感です。

投稿: ひざがわり | 2006.08.19 16:40

首都圏で税抜き年収900万円というと、
14ヶ月で割ると、月64万…手取り50万強?
近年の求人情報では、
マネージャクラスで600万以上。
部長クラスになっちゃうかもしれません。

70平米くらいの賃貸住宅に住もうとすると、
23区のはじっこで15万/月くらい、
通勤1.5時間見当の位置でも10万は下回れないかもー。
マンションを買ったら新築で最低4000万プラス諸経費。

不動産を保有してるかどうかで左右されそうです。

投稿: bun | 2006.08.19 21:34

>bunさん
 フォローありがとうございます。
 投稿者にとっては、かかる費用も高いという面も合わせての「決して多いわけではない」ということなのかもしれませんね。心情的にはわかります。
 そうなると、この方が言うのであれば、所得制限撤廃よりも地域差を考慮すべきだという方が合うような気がします。これまた難しいですし、是非はさておき。

投稿: ひざがわり | 2006.08.19 22:19

貧乏なら、私もそういう環境だったので、お金かけなくても大学出られるというのは実体験として持っています。小学校から高校まで公立だったし、大学は国立だし、塾に通ったのは中学3年の高校受験くらいで、大学受験のときは、塾にも予備校にも通わなかったし、入学金は払ったけど、授業料免除と奨学金をうけていたんで、親が負担した教育費は、学歴の割には安上がりだったのではないかと自負しています(笑)

で、これは、私の世代の話なわけですが、果たして現在進行中の改革が進行した後、私の子供の世代になったときに、私のような貧乏人の子弟が高等教育を受けられるのかという不安があります。私らの頃のように、貧乏な家庭でも勉強できるような制度、環境は残っているのだろうかという危惧しています。

あと、中学校に入るとお金がかかるという話ですが、中学生を持つお母さんからきいたのですが、特に私立でもなく塾に行かせているわけでもない、公立の中学でも、お金がかかるというのです。中学に入ると、まず制服があって、学校指定のかばん、靴、ジャージを買わされます。その辺のスーパーで1000円で買えるわけではなく、数万円のものを買わされるわけです。で、学校では部活必須ということで、どこかの部には必ず所属しなくてはいけないそうです。文化系はどうかわかりませんが、体育会系の部を選ぶと、何故か練習義は学校指定のジャージではなく、部指定の練習義を新たに買わなくてはいけないわ、シューズも指定だわで、お金がかかる。試合の時のユニフォームはまた別に買わされる。道具を使う部であれば、道具代がかかる。合宿するといえば、その費用もかかる。。。というわけで、特別に学校教育以外に塾などの教育をしなくても、恐ろしい程のお金がかかるというのです。公教育な筈なのに、何十万もお金が必要になるというのもおかしな話だと思います。経済的に余裕のない家庭であれば、それだけでかなりの負担になります。何だか変な話だと思いませんか?最低でも義務教育であれば、経済的な負担はそれほどかからないような制度にすべきだと思うし、本人の適性とか希望によっては、更なる高等教育も家庭の経済事情に左右されずに受けられるような制度はちゃんと確立すべきだと思うし、そういうところにお金をかけてほしいと私はつくづく思ってしまいます。

投稿: こに | 2006.08.20 01:15

>この方が言うのであれば、所得制限撤廃よりも地域差を考慮すべき

そうですね。
でも残念ながら彼女には感覚がつかめないのかもしれないし、
勤め先の事情によっては地方転勤によって給与がより下がる恐れもありえます。私の実家(静岡県東部)近辺では、一般求人での年収は首都圏の半分、住宅費は2/3程度にしか下がらないので、もう少し複雑な変数を用いて考慮しないといけないのかもしれません。

予算を持っている側にも頭の痛い問題だと思います…

投稿: bun | 2006.08.20 11:14

コメント遅くなりました。すみません。
>こにさん
 経済状況に恵まれなくても頑張れば何とかなる、ということも大事です。一方、そのような制度の有無にかかわらず家族そろって頑張ることも大事です。
 僕が九九を憶えたのは父が新聞折り込み広告の裏紙に手書きで作った表でした。いくらでも方法はあるし、頭を使って工夫する分にはお金かかりませんし。
 この辺りは苅谷先生の分野ですね。本は買いましたがまだ読んでいません。経済状況により左右される面があるのは確かですが、「貧乏パワー」も侮りがたしだと思っています。

 公教育の費用は、簡単に言えば投票によっていくらでも変えられるはずですね。

>bunさん
 投稿者が世間の年収を考えもせず自分のことだけしか考えていない、と思われても仕方ない文章だったという面はありますね。「年収1億の人にも同じことを考えますか?」と聞かれたらどう答えるのか。
 もちろん、新聞の投書欄に複雑な変数を求めるのは酷な面もあります。何しろ投書欄のコーナー名が「言わなきゃソン」ですから。
 可能ならば、投稿者にこの一連のやり取りを読んでいただきたいですね。その上でどう考えるのか聞いてみたい気もします。

投稿: ひざがわり | 2006.08.24 07:23

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